│6月16日
夕暮れ。洗濯物をとりこみに慌ててとびだした。
生クリームのように重たく湿った空気がつつみこみ、
風など、どこかに忘れたような世界。
その果てには、雲がピンクと紫に染まりながら静かに燃えている。
│6月18日
朝の散歩。
季節が変わる前ぶれなのか、枯葉がしゃらしゃらと降ってくる。
チョコレート色の大地にちらばる、淡くくすんだ緑の葉には宝石とおなじだけの価値がある。
昔からそう決まっている。
夕闇の散歩。
霧雨が公園をのみこんだ。
霧雨にのみこまれてがらんとした公園を、儀式のようにひとり歩いた。
これにより、公園は霧雨とわたしだけのものになった。
(ただし、カエルたちのじゃまをしてはならない)
街路灯は星がおりてきたようにきらめき、
傘にはねる雨粒は、このひとときを記念するために打たれる太鼓のようだった。
夜の散歩。
小さなあずま屋でパーティーが開かれていた。わたしはてくてくと通りすぎた。
雨は強まる一方で、黒いアスファルトは濡れて虹色になっていた。
すべての道は、いつもいつも、美しいのかもしれない。
すべての道が、こんな風に、いつだって祝祭のように。
帰り道。木立をぬけるあいだじゅう、雨音や葉のこすれあう音がさやさやと響いていて、美しい楽器のなかを歩くようだった。
│6月20日
早朝の光が、木々のすき間から次々とこぼれてゆく。
いつも通りすがるタチアオイには、はちきれそうに膨らんだつぼみが、鈴のようにたっぷりついている。
公園に着くころには、混ぜあわせたばかりのオレンジとピンクにゆらめく太陽が、寄り添う低木たちを激しくさしつらぬいていた。
目覚めた虫たちが、耳元をやかましくかすめていく。
空気が熱をおびてゆく。夏が笑いながら近づいてくる。
湿った森を、私はさまようように歩く。
逃げられない夏から、逃げだすことを、あきらめきれず。