2023/9/2
東京はずっとむしあつくて、夏の底をさらうような日が続いていた。
9月に入ったとたん、朝焼けに秋の色が混じり、一瞬呆けてしまった。
ブルーグレイと、カシスオレンジ色に染まってたなびく雲……
すべての人に、黄金のような秋がはじまりますように。と唱えた。
少しを時をさかのぼり、8月のさなか。
ときどきふる雨に、なにごとも変化することを思い出させられ、この暑さもいつか終わると言い聞かせていた。
今回は、そんな夏の間に何度かおとずれた雨にインスピレーションを得て、とある物語のワンシーンを絵にしてみようと思った。
それは、小説にするつもりで書いた、小さなカエルが雨の中を走っている場面で、きっと何かのクライマックスで、とても気に入っているのにそこまでの話がなかなかまとまらないというような……(よくあることでしょう?)
いくつもの可能性を、紙に書いては丸め、書いては丸め……。
ただ雨の中を走るカエルのビジョンは変わらないので、ためしに絵にしてみようと。
結果的に……今までどうしてやらなかったのか!
この1匹のカエルは、わたしがタブローとして完結している絵よりも、物語の一部としての絵を描きたいと思っていることを教えてくれた。
最初はいつも、スケッチブックをペンや鉛筆で描き散らかすところから。
これは形が定まってきた最終的なもの。
右のようなダンスに近い動きも試したけれど、カエルの感情があまり出ないと感じた。
彼女は歓喜しながら走っているはずだった。
手足を曲げ、てのひらに雨を受けさせるようにしたら、喜びが現れたのでこれにしようと思った。
下描きはいつも色鉛筆で、水性と油性を混ぜる。
水性色鉛筆の線はたいてい、あたりをとるためや、形を探るために紙を散らかす。
アクリルガッシュで着彩するとき、水性の部分が溶け出してできるニュアンスが好きなので、なるべく消さない。
さあそして、もう大部分塗ってしまった、プロセスの記録になれていない証拠写真に移ろう!
雨粒の形を直線的にしたのが気に入ったので、それを基調に押したり引いたりしながら進めていった。
でもここで、地面がひっかかる。
描き方は気に入ったけれど、他と調和していない気がする。
最後はブラウンを塗り重ねることにした。
ブラウンは欠かせない色。光にも影にもなる……
スキャンしたデータをPhotoshopで実際の色味に近づけて、ゴール!
この絵のカエルが、小説と同じカエルなのかはまだわからない。
ただわたしは、物語を、情景や感情を描くことに祝杯をあげたい。
この遊びをずっとずっと続けたい。
あと、今までずっと絵に書きこむサインが苦手だったのだけれど、今回新しく考えたサインはとても楽しかった。